父が散髪に行きたい、
と言うので
大きな通りまで運転をし、
床屋への送迎をしました。
地方暮らし、高齢になると
床屋に行くのも
気合いがいるのだそうで、
今日はお姉ちゃんに運転を頼めるなら
天気もいいし髭を当たってもらおうかな、
と言う。
お安い御用です、と
出かけました。
人生初めて、私は床屋さんに入りました。
客は父一人。
母娘で経営の、その床屋さんは
おかみさんは父と同じ年の生まれだそうで
話が弾みました。
父は人当たりが良くて
知らない人にもよく話しかける。
若い時は
そう言うところが恥ずかしかったけれど、
母の入所以後は一人暮らしになって
話し相手があるのは、
気分が変わっていいのだ、と
話好きに輪をかけておしゃべりが止まらなかった。
お父さん、いよいよお楽しみの
おひげ剃りの間は、
おしゃべりはストップ、ですよ。
髭を剃る間、し~んと店内が静まり返って
ただ髭を剃る音だけが
シャーシャーシャーと響く。
父は目を細めて、本当に気持ちが良さそうだ。
穏やかに目を閉じて少しウトウトしたかもしれない。
私はそこにお供している事を、
とても幸せな気持ちになった。
客は父だけだったので
おかみさんが漬けた
お漬物の油炒めを振舞ってくださり、
お茶をすすめてくださりの、親切に驚いた。
恐縮しながらもありがたく頂き、
散髪を終えた父もお茶とお茶受けをいただき
店をあとにした。
なんと、そのお漬物の油炒めのお土産付き!
コロナ禍で、このような人情に遭遇。
田舎暮らしの温かさだな、と感じた。
生きとし生けるものが幸せでありますように。